それはまるで戒め、だった。
柔らかくて敏感なその皮膚に、細い糸が絡められて強く引き絞られる。縛られた根元は、そこだけ細くくびれたようになって、酷く無残な姿のまま、ビクビクと揺れた。
「あ、ぁ…ひぁ、あああ…ッ…!」
ギンコの熱い身体が化野に縋りついてくる。引き裂かれたような彼の悲鳴が、激しい風の音にも勝って響いた。痛みが酷くて、一瞬もまともにものを考えていられない。見開いた瞳から、またボロボロと涙が零れた。
苦痛に暴れるギンコの体をただ抱いて、それしかしてやれない自分を悔やみ、化野は唇に強く歯を立てている。ランプの芯で、炎が揺れて、ジジ…と微かな音を立てた。
やがて、浅い息をつきながら、ギンコは途切れ途切れのかすれた声で言うのだ。
「…はぁ…っ、は…ぁ…。あ、あだし…の…。も、いい…。そこを、…って、くれ…ッ」
「ん? 何て言った…?」
耳元に聞こえた声は、震えるばかりでよく聞こえない。優しく聞き返し、もう一度言い直されたギンコの言葉に、化野は目を見開いた。
「切って、卵…を、取り出してくれ…っ。このままじゃ、助けられな」
「駄目だ…っ」
「でも、ひ…ぅっ、もう他に…方法が…っ」
ギンコの体は、化野の腕に抱かれたままで震え続けている。辛いだろう。痛くて怖くて、その上、激しい羞恥と底の無い快楽に、ギンコの五体は、とうに音を上げていた。
それでも蟲の命を守ろうとする彼を、愛しく思うと同時に、化野は言いようもない苛立ちに苛まれる。
…なんで、そこまでするんだ。自分のせいで、誰か人が死ぬとか言うわけじゃあるまいに。そんなにその蟲を助けたいか。どうしても自分の中で、その蟲が死ぬのが嫌か。
すがり付く腕の力が増して、ギンコがか細い声で、頼む…と呟く。だが、化野は首を横に振り、ギンコの白い首筋に、唇を押し当ててから言った。
「まだ、試してないことがある。それからでも遅くない。…まず、腕を離せるか、ギンコ。それとも、もう少しこうして、抱いててやろうか…?」
言われると、ゆっくりとだが、ギンコは腕を緩めた。痛いほど背中に食い込んでいた指先も離れていく。化野はやっと身を起こして、改めてギンコの性器を見下ろした。
根元を糸で縛られて、赤く充血したような色になったそこに、化野は慎重に触れる。再び脚を広げさせ、糸で縛った場所より少し上を、そろりと撫でながら、彼は聞いた。
「今、卵がどこにあるか、判るか…? 縛った場所よりは上か」
ギンコは辛そうに目を閉じたままで、微かに頷く。それを聞いてほっとして、化野は触れている指の位置を、ずっと奥の方へと移した。
最初そうしたように、奥をゆっくりと揉みしだいてやりながら、彼は布団の上に体を屈めていく。その途中で片眼鏡を外し、それを畳の上に無造作に転がした。
片腕でギンコの片脚をしっかりと押さえ、残る片手で奥を撫でてやりながら、彼はギンコのそれに唇を触れさせていた。最初は軽くかすめて、それからその先端を、開いた唇の間に挟むようにして、舌先でそこを小さく舐め上げた…。
「ん…っ。あ、あだしの…?」
それまでとは違う感触に、ギンコの声が揺れる。問うような呼び方にも、化野は何も答えず、さらに舌を動かした。濡れている先端のカタチを、舌でなぞって確かめるように、何度も。
「は…ぁ…? や…」
体の奥から溢れてくるような快感に身を捩り、そうして、ギンコは自分の目で見た光景に、心臓を跳ね上がらせる。開かされた脚の間に、化野が深く顔を埋めていたのだ。
埋めた顔を、ゆっくりと繰り返し揺らして、唇で、舌で…執拗に愛撫する。布団の上に這うようにして、顎を上げて、その口に彼の性器を受け入れている化野の顔が、ギンコの目にはっきりと映った。
「あぁ…ッ。やめてくれ…ッ」
ギンコは必死で叫んだ。だが、化野はそこを咥えたまま、目だけを向けて彼を見て、なお一層深く、己の口にギンコを受け入れる。真っ直ぐな眼差しを向けられて、あまりの羞恥にギンコはますます動転してしまう。
「き…汚い…っ」
そんな場所に顔を埋められて口を付けられ、さらに舌で舐め回され、嫌だと思う反面、恐ろしいまでの強い快楽。
伸ばした腕で、ギンコは化野の体をそこから引き剥がそうとし、それが叶わないと判ると、今度は彼の髪を掴んだ。背中や肩や、届く限りの場所をこぶしで叩いて、やめさせようと必死になった。
あまりに抵抗が激しいから、化野は仕方なく、一度口をそこから離す。肩や頭に掛けられたギンコの手を、両方ともしっかりと捕まえ、言い聞かせるように、化野は言った。
「汚くない。俺が嫌々してるだなんて、思うなと言っただろう。それとも、もっとはっきり言って欲しいか?」
「…う…ぁ、化野…」
彼の名前を呼びながら、ギンコは怯えた目をして首を横に振った。化野は、小さな子供に言い聞かせるように、酷く静かな声で囁いてやる。
「もう少しの間、大人しくして俺に任せてろ。なに、舐めようが、しゃぶろうが、少しも汚いなんて思わんさ。…お前のならな、ギンコ」
そうしてまた、化野はギンコのそこに顔を埋める。片手で性器自体を支えて、指先で根元を細かく愛撫し、そうしながら先端を口に咥え込んだ。口の中でビクビクと暴れるそれを、尖らせた舌先で舐め回して…。
奥にそえた手のひらで、柔らかな部分を時折強く握ってやると、ギンコは広げた脚を緩くもがかせて、男のそれとは思えないほどの、淫らな喘ぎ声を上げた。
やがて、ギンコの性器は痙攣するように、激しく収縮し始める。口を外し、今度は指先でそれの先端を細かく揉むようにして、柔らかくほぐしながら、何度か舌先で舐め上げてやる。
絶頂が近いのだ。しかもさっきよりもずっと激しい絶頂が。今は残酷なほどきつく根元を縛り上げているから、すぐは放てずにいるが、この糸を解けば多分、尋常じゃないほど激しく、ギンコの精が迸る。
化野はギンコの両膝を立てさせて、その片方だけを彼の胸の方に折り曲げさせながら、結んである糸の端をしっかりと掴んだ。
「ほどくぞ、ギンコ」
言いながらその瞬間には、化野は掴んだ糸の端を引いて、ギンコのそこを、自由にしてやっていた。
続
間違っても、十八歳以下の方は見てませんよねっ?! 今更ですが、思わず心配になってしまいましたよ、私は。
えーとっ、そのぉ、まだお子様なころから、こういうものを見るとですねっ。私のようなイケナイ人になってしまいますからねっ。とかなんとか、お馬鹿なことを。笑。
化野先生からギンコさんへの、初フェラで〜す♪ ここで♪マーク付けるのもどうだかな。あはー///
前に拍手ノベルで、そういうの書きましたが、ギンコさんが、その行為に特別弱いのは、初めての時がこうだったからかもしれませんね。初めて口に咥えられて、しかも中にいる蟲の卵は暴れ出しちゃうし(そうなんですよっ!?)、根元は縛られてるしで、これって拷問?! ねぇ、拷問?
執筆後コメントまで、いい具合にコワレています。すみません。惑い星は今、とてつもなくエロ星人です。てな訳で、華蜻蛉八話、お届けしました。お疲れさまーん。
おっ、今日、バレンタインじゃないっ。ま、ストーリーには関係ないけどさ。あっはv
07/02/14

華 蜻 蛉 hanakagerou-8