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Voice voice voice … 5
頬染めて可愛い顔してるくせ、ヒル魔の口から出てくる言葉は、ちっとも可愛くなんかない。
「糞奴隷ッ、ヘタなんだよ、てめぇはっ。そこばっか、しつけぇ」
「え、でも…結構、よさそうな顔してっけど……。それに、ここ、こんな。わッ!」
もう一個残ってた枕が、顔面に向けて飛んできた。葉柱はそれをなんとか肘でブロックして、一瞬閉じた目を開けたら、ヒル魔はサイドテーブルの方へ手を伸ばしてる。
そこにあるものを次々投げられそうで、思わずお詫びの言葉を吐いた。情けねぇけど、しょうがねぇ、こいつが主人で俺は奴隷だ。場所がホテルのベッドでも、それが変わる訳じゃない。
「わ、悪ぃ…。じゃあさ、どーすりゃいい? お前のイイようにすっから、モノ投げんのはやめてくれ」
それでも何か飛んでくるのを覚悟してたら、意外にも、ヒル魔はちゃんと返事を返してくれた。さっきまで気持ちよくて、シーツの上で首を振ってたからだろうけど、金の髪はぐしゃぐしゃで、どっか可愛い気がしてくる。
「……もっと、ゆっくり」
「ゆっくり? こう…か?」
じれったいのは嫌だろうと思ったのに、主人の好みを読み違えていたらしい。
そんなやり方、もちろん初めてだったけど、葉柱は女王の前に跪く騎士のように、ヒル魔の足首の辺りにキスをした。ベッドに這い蹲る恰好が、普通ならムカつく筈なのに、それがちっとも嫌じゃない。
足首から唇を滑らせて、膝までキスを繰り返し、嫌がられないのを確かめながら、今度は少し口を開いて白い肌を啄ばむ。仰向けで脚を開いているヒル魔のそれが、視線の先にチラチラ見えて、心臓はバクバクしっ放し。
すぐ届くほど近いのに触っちゃ駄目で、こんな珍しい拷問もねぇよな。すげぇ辛くて、でもヒル魔の望み通りに、必死で我慢してみるのも、なんか、悪くねぇような気がしてきちまった。
キスしてた場所を手のひらで撫でてやりながら、葉柱はこっそり顔を上げて、ヒル魔を見る。彼は顔を横に向け、喉を反らして微かに喘いでいた。閉じた目蓋に睫毛が揺れてて、薄く開いた唇が、物凄く色っぽい。
「な、なぁ…これ、気持ちい?」
そっと聞いてみる。聞いた途端に、閉じてた目が開いて、ヒル魔はちらりと葉柱を見た。強気な光が微かに戻るが、ヒル魔は葉柱の問い掛けに、気分を害したりはしなかったようだ。かすれた小さな声が、葉柱の懸命な愛撫の感想を言う。
「…ぁあ…悪かねぇ…」
気に入られたのでホッとして、葉柱はさらに愛撫の場所を、ゆっくりと変えた。膝を過ぎて、太ももを唇で辿り、いっそ中心を舐めちまいたいのを我慢しながら、片手をするりと尻の方へ近付ける。どうしようか迷った挙句、ストレートに聞いてみた。
「手ぇ、も少し上にやっても怒らねぇ…?」
「上…って…どこだよ」
ケツとか尻とか言い憎いじゃねぇか。聞き返すなよな、コイツ。一か八かで、そのまま手を上に滑らせる。尻の肉を軽く掴んで、そこでもう一回、おうかがい。
「ここ」
「…もう触ってんじゃねーか。は、ぁぁ…」
この声。ほんのちょっと聞いただけで、あの日のあの喘ぎや吐息が全部、耳に蘇っちまった。ここでも嫌がられなかったから、葉柱はそっとそこを撫でながら、さらに脚の付け根の方に、キスを近付けてみる。
もう、すぐそこなのにな。いつ、そこを許して貰えんだろ? 黙ってこうしてたら、ヒル魔から、してくれって言ってくんのかな。それともこっちから聞けばいいのか?
そうだったとして、じゃあ、なんて言う? しゃぶらしてくれ、とか? 言えるかよ、んなこと! なら、もうちょっとソフトに、そろそろ、そこ舐めさせてって? あんま、変わんね…。
「舐めてぇ?」
「…っ!」
いきなり言われて、葉柱は舌を噛みそうになった。ヒル魔は一見して冷静そうな顔で、じっと彼の方を見ていた。唇に浮かんだ笑みが、相変わらず悪魔っぽいけど、今日のはいつもと違う悪魔だ。小悪魔ってヤツ?
ヒル魔は葉柱の頭に手を伸ばして、彼の黒い髪を細い指で弄んだ。その指は、よく見ればやっと判る程度、微かに震えている。
「なんか、すげぇ目ぇして見てっから。…そんな欲しいかよ? 口でしてぇの? 男のアレだぜ? 判ってっか、ハバシラ」
そう聞いたヒル魔の顔の、キレーなことったらねぇよ。目が潤んでて、そんで耳が少し赤くて。都合いい考えかもしんねぇけど、して欲しいって言ってるように見えちまう。
「…判ってねぇわけねぇだろ。それでも、舐めてぇ」
そこまではっきり言ってやったら、ヒル魔は視線を横に逸らした。首を思いっきり捻って、横顔をシーツに押し付け、寝乱れた髪で、殆ど顔を隠してしまう。
やっぱ、していいってことなのかな? そこらへん実はよく判んねぇけど、なんかぶつけられたら、また謝ることにして。
葉柱はそろそろとヒル魔の両膝を開いてみる。殆ど抵抗なく、華奢な脚が左右に広げられて、白い太ももの間に、半分立ち上がった、それ。薄暗がりだから、そんなにはっきり見えないけど、なんかちょっと可愛い形に見えた。
ああ、そういえば、この間は、ひでぇことされてたっけな、ヒル魔の…。ナイロン糸ぐるぐる巻かれて、あれじゃ元の形なんか判らなかったし。そっか、普通だとこういうふうなのか。
などと、変にマジマジ見ちまって、いつもだったら、とうに怒鳴られてそうなもんだ。けど、これを舐めるのかと思うだけで、ドキドキが段々大きくなってくる。
そっと顔を寄せた。揺れた葉柱の髪が、脚の内側に触れた途端、ヒル魔は秘かに息を止める。
咥えられた途端、あられもない声を上げるのだけは、プライドが許さない。馬鹿げているとも言えるが、それがどうしても駄目で、いきなり強烈な愛撫を与えられると、悪態ついて逃げたくなる。丁度、さっきみたいに。
「ヒル…魔…」
声が聞こえて、それから葉柱の舌の先が、そっと…そぉっと、ヒル魔のそこに触れてきた。柔らかい鳥の羽が触れたような、そんな優し過ぎる感触だった…。
続
ああぁ、またやりっぱなしノベルになってしまいました。
反省している筈なのに、その反省がノベルに反映していません。しかも、格好良くて、半端じゃなく意地っ張りなヒル魔さんが書きたいのに、全然、いうコト聞きませんよ、うちのヒル魔っ!?
葉柱さんの舌、そんなに良かったのか? それでヤって欲しいのか? そんなメロメロなヒル魔さん嫌だ! どうなることやら、うちのルイヒー。先が思いやられるよ。
こんなんルイヒルじゃない!とか、自分でも叫びつつ、やっぱり書いちゃったからには、微妙に可愛いんですけど。どーしたらいいですか。どうにでもなっちまえかしら、やっぱ。
こんな二人でも、応援してくれる方がいる事を、無駄と知りつつ祈ってます。ガクリ。
07/01/25
