sweet fruity floral … 2




 咥えてしゃぶった途端、何されてるか気付いて、バタつき始めるヒル魔の膝を、彼の体の両脇まで持ち上げて、腰まで浮かせた恰好にさせる。

「て、め…っ、何してやが…っ、ぁ…は、ぁ。ひぁあッ」

 シーツに掴まる手を離させるには、別のことでその手を使わせるしかねぇし。だったら嫌がることして、抵抗しちまいたくさせるだけだろ。

 乳首舐めていーって言われるのも初めてだけど、こんなに、ここ容赦なくイジメるのも初めてかもしんね。俺って舌が器用だから、あんまし手加減無しだとヤベぇのかも?

 ぴちゃぴちゃ音を鳴らしながら、しつこくそこを舐められてる間、ヒル魔の両手はシーツから外れ、葉柱の髪を引っ張ってた。引っ切り無しに、色っぽい悲鳴が聞こえてて、上擦った声でハバシラって言われたのと同時に、彼はヒル魔の後ろに、指を一本突っ込んでる。

「…って…ぇッ。く、ぁ…」
「そんな痛く、してねぇよ」

 痛いと叫べば、手加減して貰えることを、ヒル魔の体が記憶していて、本人の意思とは関係なく、そんな悲鳴が零れた。だけど加減してやる余裕が、葉柱の方になくて、長い指が一本、そのまま根元まで捩じ込まれる。

「お前の零したもんで、ここ、ちゃんと濡れてるし、指一本くらいで痛かったら、後がヤベぇ、だろ? だから二本でもヘーキ。ってか、そのくらい慣らさねぇとダメ」

 力抜いて、と囁いて、前をまた咥えてやって、一度抜いた指を二本にしてもう一回。今度は一気に入れないで、前後に揺するようにしながら。そうして指の関節のとこまできたら、捻りをくわえて慎重に。

 入った指に慣れてきて、浅くて速いヒル魔の息遣いが、ややゆっくりになった頃、葉柱はやっとヒル魔のアレを舐めるのをやめ、指を引き抜いてゆっくりと前から繋がった。

 ちょっと前までシーツばっかり掴んでたヒル魔の手が、腕ごとちゃんと背中に回されて、縋り付くのが凄く嬉しい。

「痛い? 平気?」
「平気だ…っ、糞ッ。てめぇのなんて、大したもんじゃ、ね…っ。ぁ…ぁ…ひぁ…ッ!」

 両膝を抱えて、体を二つに折った姿勢にさせてるからか、繋がり方がいつもよりずっと深い。イイとこにメチャメチャ当たって、それを抜き差しされると、そのたびに意識が飛びそうになる。

 濡れたまんまの金色の髪が、シーツの上で散らばるのが、またちょっとシーツにヤキモチ妬きたい気分になるけど、そしたら何、今度は座って膝の上に抱えりゃいいかな。それいいアイディアだけど。今日は止そう。殺される。

 たった今は大晦日だけど、明日は一月一日。その次は二日。二日の午後には、バッツ全員電車乗って、また一週間も十日も合宿なんだって。

 会えない日々がまたやってくるかと思うと、葉柱はヒル魔に優しくしたいような、酷いことしたいような、訳の判らない気分になる。どっちにしたって好きだからで、想う強さが愛撫の激しさになっちまう。

 次こうしよう、なんて考える間もなく、無意識に体引き剥がして、悲鳴を上げさせながら今度は後ろから繋がった。半分かすれたように弱々しいヒル魔の喘ぎが、脳天直撃してもっと葉柱を興奮させる。

 またしてもシーツに立てられる爪が、また彼の目に映ったけど、感じまくって溺れてるからなんだって、今度はちゃんと認識できた。だからもっとその指先が、シーツを掻き毟って乱れるように、激しく乱暴に揺さぶった。

 そんなヒル魔の両手の指から、すっかり力が抜けちまったころ、二度も中に出しちまった葉柱が、気を使いながら身を離す。

「ごめん…。だいじょぶ…?」
「…ファッキ…ン…」
「それ、大丈夫ってこと? 水とかいる?」
「………」

 返事がないから、葉柱は迷う。いらないのに水汲んできたら、なんかキれられるような気もしてて、丁度目に入ったテレビのリモコンに手を伸ばす。床に落ちてるんだけど、なんとか届くか。腕が長いと意外と便利。

「…そうだ、紅白。どこまでいったろ。…ぅわっっ!」

 ヒル魔の後ろからその背中越しに、ちょっと首を伸ばしてテレビをつけて、紅白歌合戦の進み具合を見た途端、彼の方を振り向いたヒル魔に思い切り突き飛ばされた。

 意表を突かれて無抵抗に、葉柱はベッドの向こう側に落っこちる。

「紅白、じゃねぇっ、喉渇いたんだよ、てめぇっ」
「あ、じゃあ水?」
「ビール買って来いッ」
「え? お酒は二十歳になってから」
「ぶっ殺すぞテメェ…」

 スイマセン、今のジョークでした。この部屋でだって、例のホテルでだって、何回も二人で飲酒しました。朝練のない時だけだけど。

「ビールだったらASATUKIドライのが、冷蔵庫で冷えてっけど。正月セットと一緒に買ったら安かったから」
「…ドイツビールが飲みてぇ、買ってきやがれ。今すぐ」
「ド…っ」

 いったい何でドイツビール!? 大晦日の夜だし、この辺の酒屋なんてもう閉まってんぞ。ヒル魔の飲みたいのって、多分珍しいヤツだから、コンビニなんかに置いてねぇだろ。どうしろってんだ、この悪魔。
 
「駅ビルん中の店に置いてる。西口んとこの」
「…あぁ、そういや酒の店、あったっけ。でも、俺、紅白で聞きてぇ曲あんだけど。知らねぇ? bone freeって歌手の、なんとかって曲…」
「……」
「判った。買ってきます。ドイツビールな。なんての?」

 こういう時は、目ぇ逸らして沈黙されんのが一番怖ぇ。駅ビルなら、行って戻っても三十分かかんねぇだろう。その位なら聞きたい曲も、まだ掛からねぇかもしんねぇし。

 ヒル魔から銘柄聞いて、それメモって、葉柱はコート引っ掴んで外へ出た。道すいてるし急げば多分、二十分で戻れそう。

 そうして葉柱はゼファーで走り出す。夜半近い夜の風は冷たくて、一気に体が冷えたけど、ヒル魔のためだしそれはいい。でも出来ればあの曲は聞きてぇんだ。まだCD出てなくて、そんな流行ってもねぇから、ずっと紅白を待ってた。

 聞き覚えてるフレーズが、耳の奥で微かに鳴った。


 いつだって babe お前だけ
 ずっと 想って過ごすから
 そのたった万分の一でいい
 俺を感じて いてほしい


                                     続
 







 紅白をネタにした…かったんですけど、うまくいかなそうな気がしてきた。でもトップの投票一位の「指に見惚れる」ってのをキーワードには、なんとかなって…るのかなぁ。

 続きはなるべく早いうちに書きますんで、ヒル魔さん所望のドイツビール、葉柱さんが無事に買って戻れるよう、よかったら祈っててやって下さいね。そして紅白一緒に見れるようにね。

 ではではー。


08/01/06