パジャマのヒル魔  A





「え、何。なんでオマエそれ」
「コーラ!」

 ムカつく。

 なんでコイツっていつもこんなにムカつく態度なんだ。ムカつく態度のくせして、そんな可愛い恰好されてたら、どーしていいか判らねぇだろうが、なんとかしやがれ。

 返事をするのも忘れて、冷蔵庫から冷えた缶コーラを出してきてやる。フツーに差し出すと、ヒル魔は片手でそれを受け取ろうとして、ぷらりと下がったパジャマの袖を、イライラした顔で眺めた。

 そーなんだよな。
 
 何でだか知らねぇけど、コイツ、俺のパジャマの上を着て脱衣所から出て来やがったんだ。人が探してんの知ってる筈なのに、どういうつもりか判りゃしねぇ。

 コーラを受け取らず、長い長い袖の先を折り曲げようとしてるヤツの様子を、俺はじっと眺めていた。そりゃあ、袖、長げぇよなぁ…。だって、俺の着てる服って、殆ど全部、この体型に合わせた特別製なんだし。

 そうじゃなくたってヒル魔は細ぇ。肩のとこ、袖付けの部分が、見てみりゃ二の腕の真ん中あたりにきている。

「何見てやがんだ…っ! コーラ、フタ開けろッ」
「…あぁ、フタね」

 プルトップを起こして倒して、フタを開けてから、もう一度差し出すと、ヒル魔は袖をまくり上げもしないまま、両手で挟むように缶を受け取った。飲みながらベッドの方へ行って、黙ってそこに腰を下ろす。

 あのさ、パジャマの上だけ着てるのって、なんか…やべぇくらいエロいんですけど。どーゆーつもり、このヒト。

 だって、俺のだからそりゃちょっと長めだけど、ベッドに乱暴に座ったりしたから、膝頭が片方すっかり見えちまってるし。開襟の襟のとこ、ボタンが一個はめてなくて、胸だってチラチラ見えるんだぜ。

 ヤっていいって? して欲しいって? 早く手ぇ出せって? 

 じゃあ、ヒル魔がコーラ飲み終わったら、早速、押し倒しちまおうかな。ってゆーか、もう堪んねぇんだけど、欲しくて欲しくて。

「ヒル…」
「…ったく、ウザってぇ。なんだよ、コレ」

 本気でイライラした声出して、ヒル魔は余ってる袖を、俺の目の前で振り回した。片手をそうやってブラつかせている間、コーラの缶はどうしかって、ヒル魔はちょっと開いた自分の膝の間にそれを置いて、冷たそうに顔をしかめてる。

 自然と視線がそこへいって、開いた膝の奥の方、ヒル魔のももの内側の、真っ白な肌が、俺の脳天に突き刺さった。

 なにこれ、我慢大会とかですか。それとも奴隷の俺の前に餌ぶら下げて、お預けの躾でもしてんの? お預けとかより、投げられた餌にむしゃぶりつく方が、得意なんですけど、ポジション的にも。

 知ってるよね? 俺のポジション。

「…ヤっちまったら、怒る?」

 聞いてみる理性が残ってるのが、自分でも不思議。ベッドに座ったヒル魔の前に、突っ立ったまんまでそう聞くと、コイツは落ち着き払ってコーラを一口飲んで…。

 飲み終えたらしく、お行儀悪く、缶を床に転がして、それから俺の事見上げて、ニヤリと笑ったのだ。

「てめぇの服って、そういや全部、オーダーメイドかよ? そんな規格外のカラダしてっから、じゃなきゃ着れねぇだろうけど、金かけてんなぁ」
「悪かったな」

 言いながら、もう俺はヒル魔を押し倒してた。ヤっていいとも、悪いとも、答えねぇ方が悪ぃだろ。

 それより俺がどういう気持ちでいるか判ってて、夜中過ぎまで俺の部屋に居たり。当たり前みてぇにシャワー浴びたり。その上、俺のパジャマ着て目の前に出てきて、ベッドに座って、胸とか膝とか太ももとか見せつけて…。

 そういうの、誘ってんじゃなきゃ、嫌がらせだとしか思えねぇし。もしもホントに嫌がらせなんだったら、売られた喧嘩は買うってコトで。

「ハバ…シラ…っ」

 ヤり始めの時、ちょっと抵抗するのはいつも通り。両腕を突っ張ってもがくのを、いつものように両手を使って、それぞれ手首掴んで封じようとしたら、それが今日は片手で出来ちまうことに気付いた。

 ヒル魔の着てるのは俺のパジャマの上。かなり余ってるその袖のところを、片手で一まとめに掴んで、そのまんまコイツの頭の上に押さえちまえばいいんだよな。

 こりゃ便利だな、と軽く笑って、俺はヒル魔の両腕を軽々と封じ、開いてる片手でバタついている膝の片方を脇に抱えた。

「…てっ、めぇ…ッ!」

 あ、なんか…ヒル魔、もしかして焦ってんの? あっと言う間に押さえつけられて、そのまま太ももとか撫でられて、いつもと違うこの展開が、ひょっとしてちょっと怖いとか?

 まさかそんな筈。この悪魔に限って、こんなとこくらいで動揺するなんて、有り得ねぇとは思うけど。

「ぶっ殺すぞッ。こ、のっ」
「そんな嫌なら、なんでそんな恰好すんの、オマエ」

 いつに無く強気の俺。きっとあとで後悔するって判ってるけど、こうやって上に乗っかってる時って、滅多にねぇ下克上のひと時だもんだから、つい意地悪言っちまう。

「風呂上りのいい匂いさせて、そんな恰好で目の前うろつかれたら、飼い犬の俺だって、そりゃオオカミになっちまうっての」

 言いながら、俺はせっせとヒル魔の前ボタンを外していく。下から順番に外していくと、ボタンを一個外すごと、暴れるコイツの胸の上で、左右に広がっていくパジャマ。

 なめらかに白い胸が、風呂上りのせいだか他のなんかのせいなんだかしらないけど、ほんのりピンクに染まってて、綺麗でエロくて美味そうで…。

 そうそう、俺は逃げるヤツを捕まえて、無理やり押さえ付けていう事きかせるポジションなんだよな。あれ? ちょっと違うか? まぁ、細かいことは気にしない。

 ボタン、全部外して、袖を掴んで押さえたヒル魔の両腕は、そのまんま離さないで、俺はちょっとの間、ヒル魔の目を覗き込む。

 あぁ、なんか、ヒル魔、ヤっていいって顔してる。気のせいとか、そんなんじゃねぇんだ。いつもきっつい目の光が、少し弱くなって潤んでて、
十分の一秒かそんくらいだけ、視線を絡めてすぐ逸らして。

 こういう時のヒル魔は、いいぜ…って、言ってんだ。だから…

「……ヤりてぇ…」

 今更のように、俺は言った。でもそれは、今、一番言いたい言葉じゃないんだけどね。だってそっちは言わせて貰えねぇから、仕方なくいつもそれを言う。

「ヤりてぇ…ヤらして…てゆーか、もう、ヤっちまうから、さ。でも、あんま怒らねぇでほしいって、イチオウ、言っとく」
「る、っせ…ぇ。…は、ぁ…うぅ…」

 むしゃぶりつくのは得意。舌先にヒル魔の震えを感じた。


                                     続









 スイマセンっ、ふざけた内容でっっ! とか、前回の執筆後コメントと同じようなことを言う。書いていってビックリなんですけど、この話、エロ! 葉柱さんが、軽くヒル魔さんを強姦してます。

 そのせいか、若干?ヒル魔さんが弱気? 可愛すぎる? こんなのヒル魔さんじゃないやいっ、て思っちゃった方、ゴメンナサイ。これはこれで可愛くてイイと、思ってくださった寛容な方、ありがとうございます。

 次話の方が、きっともっとエロいです。だって、まだ胸しかイジメてないですもんね。エロに餓えている方は、是非、楽しみにしていてやって下さいね。

 もし、ヒル魔さんにハチの巣にされてなければ、頑張って書きたいと思います。ぺこ。


07/06/30