白踏花 1-4




1


 ギンコは薄闇の中で、深く眠っていた。正確に言えば、眠らされていたのだ。数人の男にいきなり襲われ薬を嗅がされ、そのまま意識を失うように眠りに落ちてから、いったいどれほど時が立っているのか。

 やがてその眠りが覚める時、傍らで退屈そうにしていた一人の男が、手を伸べて行燈の灯りを強める。ゆらゆらと揺れる、薄紙ごしの蝋燭の火。その光に照らされたギンコの瞼が震えて。

「ん…」
「目ぇ覚めたのかい? 待ちくたびれたぜ」

 小汚いなりをした中年の男。狡そうな目つきで未だはっきりと目の覚めていないギンコの姿をじろじろと見る。

「なぁ、たらふく金持ってる、てぇのはいいよなぁ。口の堅い薬師でも、俺らみてぇなならずもんでも、あんたとおんなじ生業の蟲師だってさぁ、金に物言わせてよ? 自分の願い通りにことを運んじまえるんだぜ」

 岩の上に片膝立てて座ったまま、男は岩の平らな部分で小刀を研ぎながら、まだぼんやりとしか覚めていないギンコに話し掛けている。よく喋る。まるで、抑えのきかない興奮を、無理に誤魔化そうとでもしているように。

「俺が何言ってるか分かんねぇかい。あんたギンコ、って言うんだろ? 髪とか肌とか、その目の色とかな。珍しいってんで欲しがってる旦那がいんのさ。蟲師で、蟲を寄せる体質で、って、もうよく調べ上げててなぁ」

 ゆら、と傍らの蝋燭の火のように、男が岩から立ち上がった。片手にはよく研がれた小刀。そうして、もう一方の開いた手で、男はギンコの足首に触れた。

「旦那がそんだけ、あんたにご執心ってこった」

 と、そう言って、ギンコの片足だけを、男は強く自分の方に引く。土の上に横たわっていたギンコの意識は、今になって漸く現実を映し始めたようだった。

「だれ、だ…。ここは…?」
「俺かい? 俺はクロバエっいうんだけどな。ま、誰でもいいんだって、俺の事なんかはよ。ちょっと試させてもらうぜ? 薬がちゃんと回ってっかどうかをな」

 言いながら、男は更にギンコの片足を引いた。もがいて、その男の手をもぎ離し、蹴り付けてでもやろうと思ったが、そのどれも、まともには出来なかった。両腕は腰の後ろでひとつに縛られているようだったが、それだけじゃない。

 脚が、動かない。
 脚だけじゃない、腕も。
 体が、言うことを…。

「いぃい塩梅に効いてるみてぇだなぁ。動けねぇんだろ? 四肢の関節が全部ゆるゆるんなって、足掻けもしなくなる。何されても、されっぱなしだって、この薬を持って来た薬師がな。どぉら、どこまでほんとだか」

 男の手がさらに伸びた。小刀を腰の後ろに差して両手を開けて、男はギンコの近くにより、伸べた手で、ギンコの脚の間をまさぐった。肌を強張らせるだけで、ギンコは身を返すことすらできない。

「…っ、よ…せっ」
「こりゃぁいい」

 男は喜色を浮かべてそう言った。服越しだが、好きなようにギンコのそこを揉み回し、ほんの僅か、体を捩じることぐらいしかできない獲物に、笑みを深める。

「さぞ嫌だろうによぉ。怖気が立って震えることぐれぇしか出来ねぇってわけかい。それじゃまぁ、あの旦那好みになるように、俺らがゆっくり相手してやるよ、何日でも掛けてなぁ…」

 ギンコの見開いた目に、その時やっとあたりの様子が映った。ここは洞窟だ。入口を塞ぐように、二人の男が立ってじっとギンコを見ていた。




「始めようか」

 洞窟の入口に立っていた男のうち一人が、意外に若い声で言った。もしかしたら、ギンコよりも若いぐらいかもしれない。声の主は近付いてきて、地面に置いてある行灯を取り、転がされたままのギンコの傍に置いた。
 
 薬の匂いが仄かに香る。薬師、だろうか。行灯に照らされた顔は、本当に若い。悪事に加担するようには見えず、問い掛けても嘲笑うだけの男とは違うと感じた。腕を体の後ろで縛られ、薬で四肢を弛緩させられ、転がっていることしか出来ないギンコが、その男の方に顔を向けて言った。

「…あんたも俺を、どうかしようっていうのか? 薬師なんだろう。金を摘まれて悪事に手を染めるのかい?」

 気丈を装いそう問い掛けると、薬師は笑った。いいや、嘲笑った、のだ。にいやりと、唇の端を持ち上げて。

「俺の外見に惑わされていちゃ、駄目ですよ。蟲師の、ギンコさん? 私は薬師のフヨウ。確かに薬師ですが、少しばかりコワレている部類なんです。自分の作った少々変わった薬を、好きなように『ヒト』に使える機会なんか、そうそう転がっていませんのでね…」

 若い薬師はそう言いながら、懐から小さな箱を取り出し、中から様々な容器を取り出してギンコに見える位置に並べていく。

「弛緩剤。これは今あんたに使ってるヤツだ。こちらはただの栄養剤、あんた割と強情そうだから、食事を拒むようならこういうものも必要でしょう。それから、これが…。まぁ、これについては説明するやり、実際味わって貰った方がね」

 薄っすらと笑まれて、初めて、絶望の影がギンコの頭の隅を過った。縛られた手が、指が冷たくなる。自然と息が上がって、それを知られたくなくて、ギンコは必死で深く呼吸をした。

「…あんたら、俺をどうしたいんだ…?」
「どうって? ご依頼主様の要望通り、快楽漬けの愛玩物を、ひとつ作り上げるんですよ。蟲師のギンコ、っていう名前のね」











2


「どうすんだい、フヨウ、さっさと」
「まぁ、そう焦らずに。時間は幾らもありますから」

 クロバエが目をぎらぎらさせながら急かしたが、フヨウと名乗った薬師はゆっくりとした手つきで、今度は腰に下げてある袋から、小振りの壺を取り出している。

「これはね、随分と値が張る薬なんですよ。ある土地にしかいない珍しいトカゲの体液に、そのトカゲが食べる花の蕊を磨り潰して、粘液状になるまでよく混ぜてある。こちらの小さな容器だけだって、かなり高価だ。それをほら、こんなに沢山」

 フヨウはうっとりしたように言って、その容器の蓋を開けた。ねっとりと、纏わりつくような香りがして、それから彼はギンコの方へと手を伸ばすのだ。反射的に身を強張らせるが、体はろくに動かない。シャツのボタンの、一番下を一つだけ外された。

「最初はほんの少量からだ、よく、味わってくださいよ?」

 容器の中の粘液を、フヨウは細い指先に少しだけ取り、その片手をギンコの襟の中に差し入れてくる。ほんの僅か、僅かだけ身を引くことしか出来ず、ギンコはそれを胸に塗りつけられた。シャツの内側で見えもしないギンコの左の乳首を、見えているかのように、たったのひと撫で。

 円を書く様に撫でてから、乳頭をかすめて離れたその指。フヨウの片手は、すぐにシャツの中から出ていった。強張らせた体を、ほっと弛緩させたギンコは、けれど、じわじわと熱が灯るような異変を、すぐにも己が身に感じたのだ。

「ふふ、本来は遅効性で、こんなにすぐには効果の出るものじゃないんです。でも私が調合した粉末を混ぜれば、たちどころに皮膚に浸透して…。どうです? ギンコさん」

「な…っ、ん……。ぅ…」

 ギンコは動かぬ筈の体を、強く捩った。ちくちくと刺すような微かな痛みと、じわりと灯る熱、痒み。それが、粘液を塗られた胸の一箇所から、螺旋状に這うようにして、左半身に広がり…。

「…ふ、ぅ…っ…」

 シャツが乳首に擦れて、螺旋状の熱と痒みが、もう一度重なるように広がっていく。横向きだった体を仰向けに返して、背を反らす仕草は無意識だが、それでまた胸が服に擦れて、さらなる痒み。布地が其処に触れないように、ギンコは必死で体を丸めた。

 なんだ、これは。
 たった一箇所、塗られただけで…っ。

「あぁ、よく沁みてるんですね。そんなにですか」
「脱がしちまおうぜ。なぁっ」

 嬉しげに言うフヨウの横から、クロバエがギンコの体に手を伸ばし、その腕を乱暴に掴んだ。体を引きずられ、また服が擦れる。

「…ッ…!」

 堪らなかった。もう、胸どころではなく、腰骨が、股関節のあたりまでが、緩んでしまいそうな。閉じ合わせていた脚が、力を失い自然と開いて、クロバエは歓喜したように、ギンコの服に手を掛けた。

「たまんねぇよ、もう剥いていいだろぉ…っ」
「…仕方のない人ですね、クロバエさんは。このまま小一時間放置してたって、勝手に乱れていくものを」
「俺が悪ぃんじゃねぇよ、こいつがあんまし色っぺぇからさぁ」
「腕はまだ縛って置いた方がいいですから、じゃあ、下の、前を開けるだけ」

 目の前で為されるやりとりが、一瞬遅れて意識に届く。届いても、ギンコに何かが出来るわけではなかった。震えながら体を引きずられ、ズボンの前を開けられ、そのままで乱暴に下着を下へずらされる。

 ふるり、と、それが空気に曝された。薄明かりの下でも充分に白い、淡い下毛と、まだ僅かしか反応していないギンコの…それ。

「す、げぇ……」
 
 クロバエの下種な呟きに、フヨウの静かな声が重なる。

「…穢し甲斐のある、色ですね…」

 ギンコに気付く余裕はなかったが、ずっと洞窟の入り口にいたもう一人の男が、今はこの薄暗がりの中に居る。背から下ろした木箱に座り巻物を広げて筆を手にし、目の前で繰り広げられる行為を、男は詳細に描き取っていたのである。

 







3
  



 
 それは、悪夢のような現実だった。弛緩剤をたっぷり吸わされた体は、自分の思うようになど動かない。引きずられようと、開かされようと、肌を強張らせるのがせいぜいだ。剥き出しにされた性器をじろじろと見られ、白い下毛の生え際をなぞられた。

 息を詰めて、せめてもと目を閉じても、聞こえる声から逃げることは出来なかった。

「それじゃ、もっと派手に乱れて貰うとしますか。叫ぶのは歓迎ですけど、舌を噛まれちゃ困りますからね。…これを」

 ギンコの見開いた目に、フヨウの差し出すものが映った。真ん中に、大きく結び目をこしらえた手拭いだった。口を塞がれると悟って、ギンコを首を横に振り、きつく歯を食い縛る。

 だがそんな抵抗は、ものの数秒しかもたなかった。クロバエがギンコに猿ぐつわをさせようとし、それと同時にフヨウがギンコの左の乳首を、ぴん、と指ではじいたのだ。

「ぁあ…っあ、ん、っぐ」

 声の上がった口に、あっさりと布が噛まされる。舌が奥へと押しやられ、呻くことしか出来なくされた。そしてギンコは、クロバエに背中側から抱きかかえられ、服のままで脚を開かされる。ただし性器は剥き出しだった。

「どうせそのうち気を失ってしまうでしょうけど、それまで精々、イイ声で鳴いて下さいね」

 フヨウは件の壺の蓋を取り、人差し指と中指にたっぷりと塗り薬を取る。

「ほら、これだけでいったいいくらすると思います? 貧乏人の目玉が飛び出るほど高価なんですよ? 贅沢ですねぇ。どこに塗り付けて欲しいですか? 根元からじっくりいきましょうか、それとも先端からくびれまで丁寧に塗って欲しいですか? おやおや、俺の言葉に反応していますね。そうですか、こっちに付けて欲しいんですね?」

 フヨウの指が近付いてくる。ギンコはもがいたが、暴れようとすればするほど、クロバエの両手にきつく押さえつけられ、為す統べはやはりなかった。そしてフヨウは二本の指をぴたりと揃えたまま、その指先でギンコの性器を支えるように持ち上げ、いかがわしい薬を裏筋へと塗り付けたのだ。
 
「んぅ…っ、ふぅ、んぐ、うぅ…ッ!」

 快楽の強さは、乳首の時と同じ程度の筈。ただ、胸と性器では元々の感覚が違っている。じんじんと痺れるような痒みが、どうしようもないほど強まって、ギンコのそれは一気に張り詰めた。既に先端までもがひくついて、フヨウはそれを面白そうに指摘する。

「元々が淡い色だから、まるで熟した果実のようですね。薬はあましたって勿体ない。もっと惜しげもなく使わなけりゃ…。クロバエさん、しっかり押さえておいてくださいね? 相当暴れると思いますから」

 クロバエはフヨウの言葉が聞こえているのかいないのか、ぎらぎらと光る目で、ギンコの性器ばかりを凝視している。そして、嫌がってギンコが暴れると、彼は息を荒げ、無言でにたりと笑うのだ。

 ビクビクと体を揺らしながら、ギンコは無意味に体を捩じっていた。そんな彼の目の前で、フヨウは零れ落ちるほどたっぷりと、手のひらに薬を垂らし、その手でギンコの性器を包み込む。じゅぶじゅぶという音を立てて、激しく上下に扱かれて、ギンコは一瞬、意識を飛ばした。

 けれど、せっかく途切れた意識は、妙な違和感にすぐに現実へと引き戻される。戻ると同時に声が出て、口に噛まされた布が外されているとわかった。

「ひ、ぁ、っ、ぁあッ!」
「あぁ、もう目が覚めてしまいましたか。動かないでくださいね。こんなところをこんなにされるなんて、きっと初めての体験でしょう? 奥を傷つけてしまったら大変だ。さ、もう一度入れますよ」

「なに、す…っ。ぁっ、あぁっ」

 つぷり、ずぷ。

「気持ちいいでしょう? 尿道の奥を刺激してあげてるんですよ。大抵の男は、これを知ると細い声で鳴くそうです、そう、今のあんたみたいにね」
「ぁあっ。…ひっ」

 にょう どう …って?

 快楽に翻弄されて、意識がまとまらない。くち、くちととんでもない箇所から音がする。性器の中が奥まで熱くて、勝手に声が跳ね上がる。

「んぁっ。やめ…やめろ。やめ…っ」
「それにしても、あんたのここは綺麗だ。生まれたての赤子だって、こんなに綺麗だとは思わない。ほら、こうやって尿道から器具を引き抜く時。入り口が捲れ上がって少し奥の色まで見えるんです。…内側は濃い桃色で美味しそうだ。滅多にそんなことは思わないのに、しゃぶりたくなりますね」

 でも、そういうことは、この薬を洗い流してからじゃなきゃできない。だから後でたっぷり。ここにいる、クロバエが、ねぇ。

 名を出されても、クロバエは返事もしなかった。ただただ、自分からもよく見えるように、ギンコの両脚を押し開き、ケダモノのような荒い息遣いを吐くばかり…。













4

「…コさん。ギンコさん? 俺の声が聞こえてますか? さぞ疲れたでしょうね」

 ぼんやりと開いた目に、フヨウの顔が映った。クロバエの姿がなくて、誰も自分の体に触れてはいない。けれど起き上がることは出来なくて、一本の棒と縄とで、屈辱的な姿勢を取らされているとわかった。

 体に残っているのはシャツ一枚だけ。脚を大きく広げられ、膝裏を通した棒に折り曲げた両膝を固定され、その両隣に手首を縛られている。そのままの格好で座らされていたのを、フヨウが棒に手をかけて押すことで、ギンコの体は簡単に仰向けに転がされる。

「いい眺めですよ」
「…うぅ…」

 羞恥に身が焦げそうだ。散々弄られた性器は勿論、尻の穴までもが視線に曝されている。フヨウは撫でるようにギンコの其処此処を眺めながら言った。

「この催淫剤はかなり強いので、ずっとつけたままでは皮膚が傷んでしまう。あんたはそうやって黙って転がってて下さい、一度洗い流してあげますからね」
「…ふ、ふざ…け」
「汲んできたぜ、湧水。この季節だってのにつめてぇつめてぇ」

 そんな声が聞こえて、転がされたギンコの横にどかりと桶が置かれる。びくっ、と身を跳ねさせ、ギンコはクロバエの姿を見た。クロバエは柄杓で桶の水を掬い、喉を鳴らして一口飲んだ。一瞬、その口の中が見えた気がして、ギンコは理由も分からずにぞくりとしたのだ。

「じゃあクロバエさん、その水を今みたいに柄杓で掬って、少しずつ垂らして下さい、洗うのは私が」 
「わかったよ、その後はいよいよ、俺がな」

 俺が、何だと言うのか、考えたくはなかった。フヨウに命じられた通りに、クロバエは柄杓に水を掬い、ちょろちょろと少しずつ零す。あまりの冷たさに、ギンコは竦み上がって身を捩った。濡らされるのは剥き出しの性器だ。根元から茎に、先端に、冷えた水が弄ってくる。

 しかもそれだけではなく、フヨウが細い手を伸べて、女のような細い指で、ギンコの性器を撫で回すのだ。催淫剤と精液で、どろどろに汚れた場所に、他人の指が這い回るのを、ギンコは必死で耐えていた。けれど快楽も、喉をせり上がる声も、殆ど抑えが利かない。

「ん、ぅっ、んぁあッ、ひぁっ」
「薬を流してあげてるだけなのに、その声ですか。ふふ、淫らですねぇ、もう調教の効果が?」
「うぅ、う…」

 快楽で、火のついたように体が熱く、そのせいか冷たい水で性器を洗い流されるのが、やたらと気持ちいい。先端から茎を伝った冷水が、根元から袋まで流れて、尻の割れ目を伝っていく。また立ち上ってきたギンコのそれを見て、クロバエが嬉しげに笑っていた。

「もういいだろよ? ちょっとくらい薬が残ってたって、俺は構いやしねぇよ」
「…まあ、これくらい流せばいいでしょう。中腰ばかりで私は少々疲れましたよ、ちょっと休ませて貰うとします。クロバエさん、分かってはいると思いますが、貫いてはなりませんよ?」

「あぁ、わかってる、俺は口でやるだけさ。…たっぷりな」

 目を見開いて、ギンコはクロバエを見た。クロバエは笑い、舌なめずりをゆっくり、ひとつ。醜い舌だった。ぼつぼつと疣のようなもので爛れて、紫色に変色している。クロバエは、目を見開いたギンコに、こう言った。

「気味の悪ぃ舌だろ? 昔なぁ、蟲師に騙されて、こんなになっちまったのさ。舌に憑いた蟲を払う為には、痛くてもこれを毎日塗れと言われたんだ。高い金を払ったのに、この通りのざまだぜ。だから俺は蟲師が大嫌いなんだ…。あんたにされたわけじゃねぇけど、復讐してぇんだよ。わかるだろう?」
「や…やめ…触るな…さわ…っ。ぁ! はぁ、あぁッ」

 裂かれるような悲鳴が上がった。クロバエは広げられたギンコの脚の間に、すっぽりと顔を埋め、ついさっき清めたばかりのそれをしゃぶったのだ。咥え込んで先端を舐め回す。小刻みに吸いながら裏筋を舐める。疣ようなもので覆われた、舌先が、舌の表面が、ギンコの敏感な部分を執拗に弄る。

 性器のどこもかしこもべろべろと舐められ、先端の穴は特に執拗に、凹凸の激しい疣の表面で、ぐりぐりと刺激される。絶頂はあっという間に来た。嫌悪がわいたが、堪えることなど無理だった。ギンコは性器をびくびくと震わせ、クロバエの口の中に放った。

「んんっ。んぁああーーーッ」

 喉を鳴らして飲み下しながら、クロバエはギンコの裏筋を舐めまわすのをやめない。絶頂は痺れるように長く続いて、ギンコは背を仰け反らせて、長い射精感に痙攣し続けたのである。