凛として、野山を歩いていた昔々の姿のように、
お前は顔を上げて、俺の行けぬ先へゆけばいい。
野にあるか、山にあるか、それともやっぱり都会の中か、
長い年月の過ぎた先で、俺はお前に見つけてもらえるのを待つよ。
がらんとした空虚な心の中に、お前という記憶を注がれるまで
何十年でも出会えるのを待っているから、
我武者羅に生きて、諦めず生きて生きて、どうか俺を探してくれ。
「死」ではなくてこれは、またお前に会うためのただのリセット。
夜が来て、またあざやかに美しい、眩しい朝を迎える為に、
お前に再び会うためだからこその、変えられぬ約束事だよ。
一人にしてすまない。
止まらずにずっと添っていられる俺じゃなくてすまない。
立派なことばかり言ってたって、結局はお前を一人ぼっちにする。
体があるうち、どうか、
もう一度だけ口づけしてくれないか。
眠る前のただのキスだよ、軽くでいいから、さぁ、ギンコ。
ん…、と唇を寄せて、俺はお前の唇を塞ぐ。別れの言葉を言わない為にも。
09/02/07blog
12/12/24転載