ラ・セ・ン



 手のひらから、指先から、頬から、唇から、温もりが消えていった。
 気付いていたけれど、それでもギンコは「彼」の傍にいた。
 「彼」がどんな存在なのかも、とうに判っていたからだ。

 最後の言葉は、化野からの言伝、だった。



『機械じゃない、お前。
 生身の体の、お前。
 あたたかい命。

 けれど終わらない、終われない命の、孤独な…。
 そんなお前を孤独にせぬよう、俺がこんなことをしたのは、
 お前を悲しませるためじゃなかったんだ。



 どうしたって消える命の、ずっと一緒にはいられない命の、
 お前に比べたら、すぐに消えると決まった命の…その、かわりに…。

 騙したんだと、おこッているかい…?

 おマえを好キだよ。
 オレじしんモ、おれをかタドった作りモノノおれも、
 おなジように、ココろ、カら。

 あイシ テ イるヨ  エイえン  ニ …

 ギンコ ギンコ エイエンニ 

 オマエダケヲ…』 



 機械だって、永遠じゃあないんだな。
 なぁ、化野…
 俺の存在が永遠であるよりも、それはこんなにも不確かだ。

 大丈夫、俺はお前を探す目的さえあれば、
 どれほど哀しくとも幸せなのだから。



09/05/15blog
12/12/24転載