【ルール】




忘れたふりしてるんだろうね、今。
好きになってもいなかったって思ってる。
楽に流れたっていいことなんかないよ。
類は友を呼ぶって言うじゃない?
類友だからさ、お前のことわかるんだ。

身を守るだけで精一杯の国で、
お前は使命かなんかを抱えてさ。
馬鹿みたいに沢山写真撮ってんだろうね。

お願いだから何も失くさずに戻ってよ。
もう二度とあんな日は来ないだとか、
悪い予感なんか鼻で笑わせてよ。

狡いじゃないか、だいたいさ。
治安の悪いそんな場所にいるお前のこと、
片っ端から新聞やニュース見て心配して、
いつも気が気じゃないのは俺らだけだろ。
てんで不公平だよ、お前は狡い。
死んだら許さないから、二人で恨むから。


酷い豪雨が続いてた。
時々、自分が誰だか忘れそうになる。
野っぱらと変わらないほど平らになった、
いつかは住宅地だった筈の壊れた街。
伸べた体を瓦礫の陰に隠しながら、
血の雨じゃないのをいぶかしんでいる。

残り少ない理性を掻き集めて、
折り曲げた体の下小さなラジオを庇った。
しん、と何も言わなくなったラジオ。
くすりと自分を嘲笑う。
もうだいぶ前から壊れてるからな。

あぁいいんだ、どうせ声は届かない。


ルールさ、これは。戦場にいるものの。
哀しむ権利も、だからないってのに、
投げ捨ててきた光を、現の夢に見るんだ。









(文頭文字をある短歌の言葉順にするという遊びで書いてます)


13/10/13転載
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