電気蜥蜴の島本暖簾様に、素敵過ぎて目から鼻血が出てしまうような、そんな素晴らしいルイヒル絵を頂いてしまいました!!! 力不足とは知りながら、ついついノベルを書いてしまったので、ドキドキしながらアップします! イラストはgiftのページに♪










お前の白い「ソファ」


 

 気付いたら、ずっぽり穴の中。しかも凄ぇ深くって、這い上がれる気が全然しねぇ。

いっつもあいつばっかりが、余裕で余裕で腹が立つ。今日だって、何? ホテルって誘ったのお前だろ。その途端に俺がどんなに、ドキドキで大変だったか知りもしねぇ。

 いや? 知ってんのか。知ってんだろうな。そりゃそうだ。お前は俺の心の奥まで全部、サーチライトで照らして見るみたいにして、隅の方まで知り尽くしてんだろう。

 だったら今、俺がどんな気持ちかも知ってんの? それ判っててその態度なの。そんなお前なんか嫌いで嫌いで嫌いで嫌いなのに、その嫌いを百個積み重ねたって、かなわないほどデッカく、お前が好き。

 さっきまで、お前は散々長いこと、誰かと電話してた。ついさっきその電話が終わったから、あぁ、やっと…って思って期待したのに、お前、隣の部屋に行っちまって、カタカタとパソコンの音を鳴らす。

 何時間待たすの? それとも今日はホテルへ来たけど、そんなつもりはまったく無くて、俺はお前を運ぶバイクの、ただの付属品なの。

 この付属品は機械じゃないから、ちゃんとココロがあるんだって、そろそろ気ぃついてくれてもいーだろう。

 床で膝を抱えて、俺、座り込んでるんだよ? この打ちひしがれた姿見て、お前、なんとも思わねぇなら、お前の方がココロのねぇ機械みてぇ。機械に恋して苦しむなんて、俺はほんとの馬鹿みてぇ。

 膝を抱えたその上に、すとん、と首をのっけて、そのまんま目を閉じてみたら、お前を待ってて苦しいココロのまんま、無機物になってくような気すらした。

 無機物…。無機物って例えばナニ? 石とか岩とか? 

 いや、いくら膝をギュっと抱えてても、そこまで俺、カチカチに固くねぇし。それじゃ、そっちにある豪華なソファの仲間ってのはどーだろ。ワリと綺麗に白くて布張りのさ。

 気が向いたらヒル魔、座ってくれるかも。

 自分の考えてることが可笑しくて、俺、いつのまにかうっすら笑ってたみてぇ。

「なに、してんの。一人で笑って」

 あ、なんか言われた。でも俺、ただのソファだから意味判んね。

「気持ちわりぃからやめろ、その顔」

 気持ち悪ぃってあんまりじゃね? あれ、俺、ちゃんと意味判ってる。
 そしたら俺はソファじゃねえの? もしかして別のものなの?

「拗ねてんの? お前」

 拗ねるソファって変じゃね? じゃあ、やっぱ俺、ソファじゃねーのかな?

 顔上げようとしたら座られた。
 なんだ俺、ソファでいいんだ。ソファなんだ。




「ハバシラ」

 何それ名前? ソファなのに名前あるの。それって幸せかも。

「…機嫌なおせ」


 あぁ…

 嬉しい。座られて嬉しい。
 名前呼ばれて嬉しい。
 優しいことも言われて、凄く嬉しい。
 人間になれそうなくらい、嬉しい。
 しあわせ。


「なぁ、今日…一緒に風呂、入る…? 俺のカラダ、てめぇが洗う?」
「…え…っ」

 びっくりした拍子に、俺ってソファは、ほんとに人間になったみたい。
 そして人間になった途端、視野に綺麗なものが見えた。綺麗ってーか、その…エロい…?

 とんでもない格好で、ヒル魔は座り込んでた俺の肩に乗っかってた。俺の首をまたぐようにして、俺の胸の方に、なんも着てねぇ脚を出して。

 その脚の片方の、真っ白くって綺麗でエロエロな太ももが、俺の目の前にある。

 触ってみた。
 すべすべしてて温かくて、綺麗。
 ドキドキしながら、そのままゆっくり手のひらで、撫でる。

 折り曲げて、さっきまで自分で抱えてた俺の膝の上に、ヒル魔の逆の足が乗せられてた。肌を撫でると、ヒル魔の足の指が俺の膝で、ぎゅって、強めに曲げられる。

「ヒル魔…?」

 ちゃんと声、出た。もしもほんとにソファなら、声も出せねぇかと思ったから。じゃあ、寝てたんだろうか、俺。うずくまったままで妙な夢見てて、それでそんなふうに思ったのかな。

「なんだよ」

 返事をするヒル魔の声が、上から真っ直ぐ降ってくる。

 もう、電話、終り?
 パソコン、いじらねぇ?
 やっとこれから俺だけのお前なんだって、そう思っていいの?
 そう思いながら抱いていいの?

「ヒル魔」
「ん…」
「欲しいよ」
「ケッ…。エロカメレオン」


 顔を斜めに落として、そこにある綺麗なものにキスした。俺の首を跨いで、丸めた背中に腰掛けてるお前の、もう一方の足が、俺の上でビクリとゆれた。

「だって…欲しい…」
「…俺も」

 ヒル魔は体を屈めて、片腕で俺の頭を抱く。華奢な腕も震えてて、その体から、こいつの着てるシャツが、滑り落ちていく気配が判った。

 甘く零れ出す吐息と共に、白いシャツも床まで落ちる。

「ヒル魔…」


 判ったよ。

 あぁ、もう判った。
 毎日毎日、俺を死ぬまでこき使えばいい。
 焦れて変になりそうなくらい、毎日待たせりゃいい。

 待たされれば待たされるほど、
 俺はお前を好きになって、狂いそうに好きになって、
 今にほんとに、ヒトじゃなくなっちまうから。

 そんときゃさ、きっと、お前の愛用のなんかになるから、
 また好き勝手に使ってくれりゃぁいいや。

 
 そんなことを思いながら、俺は器用にヒル魔を抱き変えて、目の前のベッドにそっと下した。そうして上からすっぽりと、包むように抱き締める。

 気持ちよさそうに、でもどこか切なそうに、付け加えればちょっと欲情してる顔で、ヒル魔は黙って目を閉じてた。

 どうやら今度は、白い毛布の役らしい。包んで抱いて安心させて、ヒル魔を優しく温めてやる毛布なのかな。それがヒル魔の望みなのかな。

 それとも…
 それとも、もっと別のものがいい? 何ならお前にイイ声立てさせる、人間の奴隷に戻ろうか。

 ご主人様は、時々、凄く正直だから、この時も素直な言葉で答えをくれた。ぞくっとくるように色っぽい、震える声で、一言だけ。



 焦らすんじゃ…ねぇよ…っ、ハバシラ…。



                                終













 すいません、すいません。ハバシラさんを椅子にしてしまいましたっ。その上、毛布にまでしてしまいましたっ。島本暖簾さまから頂いた、素敵絵を眺めていたら、いつの間にやらこんな妄想。

 あぁぁあああぁぁ、なんでなんだ!と思いつつ、とっても楽しんで書けました。こんなもので申し訳ありませんが、暖簾さまへ捧げさせて頂きたいと思ってます。

 あぁ、それにっ、一緒にシャワーとか言っといて、そんなシーンが出てこなくてすみませんっ。きっといつか書きますですっ。

 夢のように美しいヒル魔さんと、底深く微妙な表情の葉柱さん。いつまでも宝物として、愛でさせていただきますね。暖簾さま、本当にありがとうございました。


07/07/25