パジャマのヒル魔  C





「問1  全部脱がしていい?」
 ヒル魔は黙ってる。へぇ、脱がしていいんだ。

「問2  キスして舌からませてもいい?」
 ヒル魔の顔がまた赤くなる。俺のキスはさ、なんか、気に入ってくれてるみたいだから。

「問3  イく寸前まで、口でヤっていい?」
 凄ぇ顔して睨まれた。それでもヒル魔は沈黙してる。マジで?! これはNOだと思ってけどっ。じゃあ、これは…っ?!

「問4  手で一回イかしてから、今日は四つん這いなってもらって、後ろから入れていい?」
 黙ってる。う、嘘だろ。何でもOKじゃね? 

「問5  入れてる最中に、も一回イかせていい?」
 ヒル魔、これにも黙ってんだ。俺の耳、正常に働いてんのかな?

 なんかさ、その…馬鹿みたいな俺の質問を聞いてるヒル魔の顔が、いつもよりもずっと、凄く可愛くて、俺、もうメロメロなんだけど。

 え? 最初からこうすりゃよかったの? ヤりながら聞くから、素直じゃねーことばっか言われてたってこと? じゃあ…。じゃあホントに、今日、うちに来たのもヤって欲しいからで、遅くまでいたのもそうで、俺のパジャマ着たのもそういう理由?

「問6  あのさ、終わった後にさ、一言だけ、お前に一番言いてぇ言葉、言っていい?」
「NO」

 ああ、やっぱりな。そうじゃないかと思ってたけど、それってホントにホントの、ヒル魔の最後の砦みてぇ。なんでそんなとこ守ってるのか、俺にはさっぱり判らねぇ。

 でも、でもさ。今日はもう、いいや。こんなに色々許して貰えて、これ以上イイことあったら、一生分の運を使い果しちまう。

 言いたいことを言えなくて、本当は俺、心がいつもモヤモヤしてる。だから今夜はその気持ち込めて、脱がしてキスして咥えてイかして、それから一つになってさ。それでヒル魔を、大事に抱き締めて眠ろう。

「問7 朝まで一緒に、ベッドにいてくれる?」
「……」


 あぁ…
 繰り返される、声の無い「YES」が何より幸せ。
 ほんのり染まったヒル魔の頬が、
 じっと閉じてる唇が、
 濡れててキラキラの綺麗な髪が、
 細くて折れそうなカラダが、
 潤んで揺れてる瞳が…

 全部、全部、いとおしい。
 

「問8 ハバシラルイは、この先もずぅ…っと、オマエの奴隷」
「問じゃねーだろ、それ」
「…うん」

 下着に指を引っ掛けて、下にずらしていきながら、顔を寄せて口を塞いだ。

 自分でじれったくなるくらいゆっくり、まずは唇で唇に触れるだけ、それから一度離れて、もう一回触れて、柔らけぇ唇、ちゅっ、て吸って、イタズラみたいに交互に吸い合う。

 求めてくれてる? オマエ。下着を下すのを手伝うように、腰をちょっと浮かせて、カラダくねらせてるのが、凄ぇエロい。たまんなくて深くキス。俺の長ぇ舌、ヒル魔の口に、ゆっくり滑り込ませて、味わい尽くすように中を辿った。

 キスだけでイきそう。くちゅくちゅって、唾液の音が淫ら。しつこくしてると、なんか熱いもんが、俺の腹に擦れてる。そうそう、次の手順に進まねぇとさ。

「ぁ、あッ、んんぅ…っ!」

 凄ぇんだ、マジで、コイツのここ。何がってうまく言えねぇけど、舌触りとか、敏感さとか。イくのはそんな早くねぇけど、先んとこトロトロ濡れてくるのは、ほんとにすぐ。

 根元を掴んで支えながら、元気よく跳ねて逃げる先端を、飴を舐めるみたいにして、ゆっくり、ペロペロ。舌先に触れる小さい穴に、ジワ…ってやらしい液が滲むから、零れる寸前に、啜って舐めて。
 
「は…っ。ハ…バシラぁ…」

 声までとろけてるよ。もうイく? 擦って欲しい? 弾ける液、飲んじまっていいかどうか、聞くの忘れてた。いいよな? だって、こうやってオマエの出したもんなら、俺、欲しいから。

 手で扱いて、昂ぶらせて、迸り出る熱いヤツを、口開けて受け止めた。大抵、あんま濃くねぇ。溜めてると色んな意味でよくねぇし、最近は三日とあけずに、俺としてるから。

 そうじゃなきゃ、多分、コイツ、まめに自分でヌイてる…。ってのは、実は俺の希望的観測。

「じゃぁ、後ろ向いて、這って。約束、したよな?」
「…ヨくなかったら、コロス」
「だいじょーぶ。イくの、オマエの方だし。力抜いてて、舐めたげるから」

 四つん這いにならせて、腰だけ高く上げさせて、顔寄せて舐める。尻の真ん中、する…って、上から下へ、舌先でなぞった。ビクビク、閉じた穴が動くのが見えちまう。

「んんふぅッッ!」

 相変わらずの、細ぇ腰。ギリギリ反らされて、それから前後に揺れる。入れて、入れてって、催促。まだ慣らしてねぇよ。舌なら入れてやるけどさ。

 口付けて、舌、滑り込ませながら、たっぷり濡らしてやる。突っ込んだ舌が、ギュ…って締め付けられて…少し加減して欲しいくらい。あぁ、もぉ、痛ぇっての。

 入れて、早く。
 なぁ、オマエと、早く、一つにして。
 
 とかさ、

 いつか言わしてみてぇよな。これって夢なんだか希望なんだか、色んな願い事、後から後から、心ん中に溢れていっぱい。

 なぁ、ヒル魔、俺がオマエに言えない想いが、どんなに熱いか、どんなに激しいか、どんなに尽きないか、教えてあげる。今から代わりのモノ、いっぱい注いで。

 オマエのここが狭くてきついのは、そんな俺を拒絶したいからとか、そんなんじゃないよね…?

「ごめ…ヒル魔。なんか、入れたらすぐ、イきそ…俺」
「な、なんでも、い…からっ。早く。はぁ、ぅぅあ…ッ、ぁああ! ハバ、シラ…ハバシラぁ…っ」

 耳元に、口付けて先に謝っちまう。そうやって囁きながら繋がって、一回、二回、なんとか三回、揺すった途端、やっぱ弾けちまった。だからさ、これは俺の想いなんだって。イく寸前みたいに、もうギリギリだって、判ってほしいよ、いい加減。

 そう言や、入れながら、も一回イかせる筈が大失敗。

 ゴメンって、また謝ろうとしたら、ヒル魔はなんか、俺の下でぺしゃんこになってたカラダ、無理に丸めて、なんかゴソゴソやってた。破けたパジャマの袖を丸めて、シーツの上で。

 ゴソゴソ、ってか、あれ? なに?
 ゴシゴシ? 何拭いてんの?
 もしかして…オマエ、今、二回目イったの?

「…もっと、こっち、寄って」
「なんでだよ」

 抱き締めようとすると、不機嫌な返事。だって約束だから、朝まで一緒にベッドにいてもらって、出来れば抱き締めさせて欲しい。もうイったの、とか、余計なコト言わないから。

 ゴシゴシの後で、ヒル魔はもそもそ、俺の胸の前にカラダ転がしてくる。腕ん中にはまって、俺の鎖骨に額くっ付けて、疲れたような色っぽい息遣いで、俺の肌をくすぐる。

 俺は言った。

「問6」
「NO」
「別のにするから、聞いて」
「…殺されてぇ?」
「やだよ。…問6」
「NO」

 ヒル魔のかすれた声は、色っぽいけど。
 別のって言ってんのに、なんて強情なんだか。
 コロシてやりてぇくらい。 

「じゃあ、問9」
「聞いてやる」
「ヒル魔ヨーイチは、この先もずうっ…と、俺の主人」
「問じゃねぇ」

 ぎゅう…って多分、かなり痛いほど、俺、ヒル魔のこと抱き締めた。

「YESって言って」
「…NOだけ答える約束だろ」
「でも言って」

 怖いから。不安だから。いつか要らないって言われるかもって、どんだけ俺が怖いか、オマエ、判ってねぇんだよ。

 ヒル魔は答えてくれなかった。ただ、顔を寄せて、俺の鎖骨を噛んで、その噛み跡に、ふうっ…て息を吹きかけた。ゾクゾクしちまう、可愛い悪魔の息遣い。

 返事が貰えなくて寂しいけど、ハバシラルイはお蔭さんで、やたらめったら打たれ強いんだ。ヘコタレねぇよ。またリベンジ狙うから。「おやすみ」の変わりに、また軽く抱き締めて、俺は目を閉じる。


* * * * *


 ヒル魔は葉柱の眠ったあとで、そうっと目を開けて、だまって彼を眺めていた。困ったようにうっすら笑って、それから目を閉じて、やっと寝息を立て始める。



 問8

 それに 問9

 声にしないで、息遣いだけで囁いた

 まだ聞かせたくない  NO

 だって、お前は、もう、俺の……


 

                                   終

 
  




 
 

 こんな話になる筈では…。あれー? ま、まぁ、いいや。(よくないっ)ラストの部分はなんか長くなってしまいました。一人称でエロ、フルコースなんてさ。書いちまうとは思わなかった。

 それになんだ?! このエンディングの甘さは! ブラックのコーヒーをくれ!

 そんなわけで、パジャヒル終了です。ラストシーン、パジャマ関係ねーし。ガク。なんか言い足りないので、同日のブログへ続きます。


07/08/04