お前らなんかと…
「上策は口封じ」
そう言った時の、皆を俺は、じっと見ていた。笑う顔の下、淡々と感じていた。こんなふうにひとを、試してばかり。
例えば、言葉端に、ひっかかるようなことを混ぜて、その場の空気が変わるか否か。顔を見合す目、言い掛けて何も言えなくなる口、強張った肩、足音の重さ、そいつの表情の残像を。
ほらなやっぱり、
わかってるんだよ、全部。
知ってて俺はこうしてるんだ。
知ってて俺はここにいるんだ。
そして、そん時がきたら、
いつだって、なぁ。
だから、試さずともほろほろと零すおめぇが、少し苦手なんだぜ。おめぇにつられるようにして、段々変わってった五葉も…。
御せねぇことが、気に入らねぇとか、そりゃもうまっとうなんかじゃねぇな。けれど自然に任せたら、俺みてぇなのはあっという間に弾きだされちまう。
みんな俺の事はさっぱり知らず、分からずにいてさ。まあまあ許せる、それか受け流せるほんの一面だけ分かって、ほんのちょっとずつで触れてられりゃあいいのに。それだけで充分、面白ぇのに。
許して貰えてる面を、
いつしか自分で気に入ってる。
ひた隠しにしてる影に、
誤魔化し切れない嫌悪が沸くんだ。
でもどうすりゃいいって?
それが俺の、大部分だ。
変われねぇ。
変われねぇ。
生きてくために、一度は根こそぎ変えた中身を、また全部変えるなんて出来る気がしねぇ。仮にそれが出来るったって、追い駆けてくる、過去がある。だったら過去の息の根止めりゃいいのか? あぁあ、それなら出来る気がしたんだ。
過去は、過去に、消え去れ。そんなに過去が気になるんなら、とっとと、過去に戻って、しまえ…。
なのに、また俺の中身は真黒く染まった。一人も五人も同じだった。十人増えても同じだったものを、たったもう一人増えただけで、もう墨色が全身に回っちまいそうになる。
何が怖い。
何が怖い…?
この墨色が、どこまで何を飲み込むかが。俺から零れてどこまで広がるかが。
俺も、案外、
肝なんか座ってやしねぇ…。
お前らなんかと、出会うほどには。
終
五葉のっ、アニメがっ。みたいっ。
本当を言えばっ、原作そのまんまのっ、
あの五葉がっ、みたいっ。
ふぅ…。さらい屋は、むずかしす。くっきりと言葉に出来るような、単純な想いと違うって、書きながら思うのですよ、いつもね。タイトルは銀太のセリフ(長いので半分削ったけど)ですが、そのままのものは本文には出て来ません。それと重なるような別の人の思考が、あるだけね。
14/07/20