初めて訪問させて頂いたサイトさまで、惑い星はその化野先生とギンコさんに、一目惚れしてうっとり。

 ドキドキしながらカキコしたら、ほんとのキリ番を踏んだ訳でもない私に「リクエストして下さい〜」と、嬉しいお言葉を頂きました。

 いや、きっと私があんまり化野ギンコに餓えているから、優しくして頂いたのかな…とか。

 ともあれ、そんな幸せなお言葉を頂戴し「じゃあ、先生の寝顔を見ているギンコさんを!」とリクさせて頂きましたのです。

 その数日後には、もう頂けちゃった素晴らしきノベルでございますっ! しかもご覧下さいっっ。なんと贅沢なことに、ギンコさんの寝顔を眺める先生までセットでついてるんですよっ。

 そして二人で寄り添って眠ったり…。は、鼻血が…っ。ああ、本当にありがとうございましたーーー。今後ともどうぞ、お付き合いさせてくださいませ。









「 そんな日 」



約4ヵ月ぶりに化野の元へやって来た。
紫陽花がゆるく咲いていた時期と比べると、随分と穏やかで色鮮やかな季節になっていた。





「化野〜、開けてくれぇ」

文も出してあるし、村の者が家に居る筈だ、と言っていたので直接訪ねた、が。
何時ものように戸を叩いて名を呼んでも、一向に開けてはくれない。

「何処かに出掛けちまったのか?」

そうぼやきつつ、何となしに戸に手をかけ力を込めると、いとも簡単に開いた。

「化野ぉ〜」

暗い家の中に声が響くが、返事はない。
なんだか段々不安になってくる。

まさか、中で倒れているのではないか、等と考え始めるとなかなかそれは拭えない。

「…邪魔するぞ」

念の為一言断ってから家の中に入る。

きょろきょろしながら家の中を歩いて、化野の自室へと辿り着いた。
此処も明かりはなく、実にシンとしている。

襖に手をかけて、ゆっくりと開ける。

「おい、化野居るの、か…」

開けてみると、化野は暗い部屋の真ん中で眠っていた。

少々肌寒い温度なのにも関わらず、着流し一枚で掛け布団も何も被っちゃいない。

「…眠ってたのか」

心配して損したな、とため息を吐く。
全く、何故昼間からこんな所で眠ってるんだ。

起こさぬように化野の傍に近づき、横へ座り込む。

普段ジロジロと見ることはあまりないが、こうやってゆっくりと見ると、化野の顔がとても整っている事に気付く。

スッと通っている鼻筋や、薄い唇。
何時もは己を映し出している漆黒の瞳は、今はその身を潜めている。

穏やかな寝息だけが、室内の中に音を作り出していた。

「化野」

名を呼んでも、当たり前だが返事はない。

あまりにも気持ちよさそうに眠っているので。こちらも何だか瞼が重くなってきた。

(どうせこのまま起きていてもな…)

長い旅のせいで疲れているのも事実。
これで眠くならない方がおかしいのかもしれない。

荷物を静かに下ろし、化野の横に体を横たえる。
静かな顔を眺めつつ目を閉じると、すぐに睡魔に意識は流された。

(…そういえば、化野寝顔なんて珍しいな)

−どうせなら、もっと眺めておけば良かったな…

そんな事を微かに感じつつ、意識は現実を離れていった。





ギンコから文がきた。

もうすぐこちらに来るらしい。

楽しみで、嬉しくて、少々寝不足だったので、仕事がない今日は昼寝をする事にした。

が、これは予想外だ…

「ギンコ…」

目の前で、白銀の髪が揺れている。

閉めた筈の襖が開いているのは、恐らくギンコが閉め忘れたからであろう。
そこから秋の風が、ゆるりと入ってきて、ギンコの髪を揺らしているのだ。

美しい翡翠の瞳は今はその身を隠していて、それはそれで綺麗だった。
規則正しく呼吸をしている唇に、自然と目がいく。

ゆっくりと動く胸が、何故か愛しい。

「起こしてくれれば良かったのにな」

冷え始めているギンコの体に薄手の毛布をかけてやり、またその横に寝転がる。
突然の温かさに驚いたのか、ギンコが軽く身じろきする。

「ん…あだしの…」

「まだ眠っていていいぞ、ギンコ」

疲れ切っているであろう体が心配で、そう言ってやると、ギンコは再び瞼を下ろした。

すぐにまた微かな寝息が聞こえ始める。

それを見ていると、自分もまた眠くなってきた。

恐る恐るギンコの被っている毛布に入り込む。
ギンコの熱で少々温かくなり始めたそれが、心地よい。

一人用の毛布に二人はキツイから、という言い訳をしつつギンコを抱き寄せる。

「ま、これくらい許されるだろう」

こんなに接近する事はあまりないので、目が覚めたギンコの焦る様が、目に浮かぶようだ。

「おやすみ、ギンコ」



窓の外を紅葉が舞っている。

落ち始めた日の放つ紅が、部屋にまで流れ込んだ。

たまには、こんな過ごし方もいい。

じわりとした体温を感じながら、化野はまた静かに目を閉じた。




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